障害福祉サービスのグループホームの利用期限について




特定非営利活動法人クラブハウスこころのリカバリー

NPO Mind Recovery

はじめに

国制度の障害福祉サービスの料金や期限は、精神障害・知的障害・身体障害の3種類ごとに異なります。自閉症・発達障害を「精神障害」とみなす自治体が多いです。

障害福祉サービスのグループホーム(GH)を利用するには、サービス受給者証が必要です。サービス受給者証は「利用する人の住民票がある市区町村(自治体)」が発行します。

GHの利用期限を決めるのは、利用する人の住民票がある自治体で、国でも都道府県でもありません。サービス受給者証の有効期限は一定ではなく、自治体ごと、利用者ごとにまちまちです。そして、「サービス受給者証の有効期限」が「GHの利用期限」の場合もあれば、そうでない場合もあります。どちらの場合も、現在の障害福祉制度では、GHは終身利用を保証するものではありません。

私が主に関わった東京都の場合では、自閉症・発達障害を「精神障害」とみなしています。東京都の精神障害GHには、「通過型」と「滞在型」の2種類があります。

通過型GH

利用対象者:だいたい3年以内にアパート一人暮らしを目指す人。

常勤職員:精神保健福祉士などの専門資格がある。

サービス受給者証の有効期限:自治体により、1年間、または2年間。まれに3年間の場合もあります。サービス受給者証を更新して利用延長ができる場合もあれば、できない場合もあります。

有効期限が近づくと、利用者も含めた会議を行います。その会議で、利用延長かアパート転居か、も含めて話し合います。利用延長の場合の、延長期間は1年間、の場合が多いです。延長の有効期限が近づくと、再び利用者も含めた会議を行います。

滞在型GH

利用対象者:アパート一人暮らしなどを目指す人。

職員:専門資格は必須ではありません(2022年現在)。

サービス受給者証の有効期限:1年間の場合が多いです。

有効期限が近づくと、利用者も含めた会議を行うことが多いです。利用延長の場合の、延長期間は1年間、の場合が多いです。滞在型GHは、1年ごとに利用を延長していくことが多いですが、終身までの延長は保証していません。

近年は、GHを利用している63歳を過ぎた人は、GHから高齢者施設に移る方向で、話し合いが持たれることがしばしばあります。65歳過ぎると、障害福祉サービスのGHでなく、介護保険の高齢者施設を利用、と捉えている自治体が増えています。

高齢の精神・発達障害の人の住まいについて

高齢に伴い、身体や認知機能にも障害がでてきて(重複障害)、それまで住み慣れた精神障害のGHが合わなくなることがあります。

重複障害に対応する施設が他県にしかなく、また申し込み待機者が何人もいる、ことは珍しくありません。そこで、重複障害の進行をできるだけ遅らせて、住み慣れた精神障害のGHに住み続けたい、と思う人は少なくありません。しかし、医療も含めたケアと健康管理を提供する精神障害のGHは、まだとても少ないです(2022年現在)。

住み慣れたGHで医療の治療が必要になった時は入院になり、入院の長期化や、バリアフリーでないGHで車椅子を使うことなどが見込まれる時は、入院中にGHを退去になることがあります。

それまで一人暮らしや、それに似た暮らしをしたことや、他県などで暮らしたことがなく、親元か、一つの施設にずっと暮らし続けた人が高齢になった時、居場所を変えるのは難しいでしょう。

精神障害のGHを利用する意味

20代、30代で、親元と住み慣れた場所を離れ、様々な援助者(ヘルパー、訪問看護、世話人、相談員、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、など)と関わることで、その後の住まいの選択を増やすことができます。

GHは利用期間中でも、変えて良いのです。GHごとに特徴があり、援助者も様々です。自分が住みたい町のGHに申し込み、GHに入居して数年後に、近くのアパートに転居して暮らしている人もいます。

申し込んでもGHに入れない場合

  • 申し込み待機者が何人もいて、GHに空きがない。

  • 障害により、GHの受け入れが難しい場合がある。

1日24時間、介助者を必要とする重度の自閉症や強度行動障害、に対応できる精神障害のGHは、まだとても少ないです(2022年現在)。

精神症状を伴う軽度(IQ60以上程度)知的障害の人は、精神障害であり、知的障害でもありますが、精神科の主治医がいる場合は、精神障害のGHが受け入れる傾向があります。一方、精神症状よりも、知的障害が主な障害の場合や、発語がほとんどない場合、精神障害のGHごとの判断になりますが、受け入れが難しいといわれることが多いです。

家族と同居中でGHを利用検討している、または申し込んで待機中、にやっておいた方が良いこと

 家族以外の訪問援助者を家に入れる

 援助者とのコミュニケーションや他人の援助、に慣れておくと、暮らす場所が変わった時のストレスが、少し減ります。

 家族以外の援助者とは;

ヘルパー(介護保険):家族同居の場合、公的利用が難しい場合がある。利用するためには、自治体の認定調査が必要。問い合わせ先は、住民票のある自治体の障害福祉課、または保健相談所。

精神訪問看護(医療機関):精神科の主治医がいる場合、主治医の指示で利用。利用料は「自立支援医療」の手続きをすると、自己負担が軽減される。問い合わせ先は、通院先の医療機関。

 訪問援助者を利用するにあたっての二つのストレス

  1. 宅配便のように、来る時刻に2〜3時間の幅がある。

  2. ヘルパーさんや看護師さんは時々変わり、いつも同じ人が来るとは限らない。

 この二つのストレスは、ヘルパーさんや看護師さんに限らず、援助者を利用する時には、常にあり続けます。

 この二つのストレスを避けたい場合

      • 決めた日の決めた時刻に、いつも同じ援助者が来る、民間の訪問サービスを自分で探す。利用料は全額、自己負担の場合があります。

最後に

 訪問援助者を利用せず、親元でずっと暮らし続ける、という選択もあります。

 親と兄弟が高齢や亡くなるなどで、生活に支障が出てきた時は、ヘルパー(介護保険)を利用し、金銭管理や後見人が必要になった時は、住まいのある地域の「社会福祉協議会」に相談することができます。

 社会福祉協議会のサービスは、希望の条件と少し異なっていたり、利用者が多くてすぐに利用できない場合があります。

どのサービスも、必要になった時ではなく、早めに相談しておくと、ゆとりができます。