相談Q&A




特定非営利活動法人クラブハウスこころのリカバリー

NPO Mind Recovery

はじめに

当相談サイトに寄せられた相談で、共通した内容と回答例の一部を掲載します。同じような悩みや課題を持つ方の参考になれば幸いです。相談の背景には、コロナ禍で失業・仕事が見つからない・生活に困窮、されている当事者の方々がいます。

求職中の当事者を支援する方からの相談が、相談件数のおよそ9割を占めました。コロナ禍で求人激減・活動制限のなか、ご本人を支援する方たちの悩みは多様です。相談員は情報提供だけでなく、支援される方の「次からはこのように関わってみよう」という思いが生まれることを一番に心がけました。

コロナ禍でも平常時でも、自閉症・発達障がいの人を支援する方の共通する悩みは、大きく分けて次の二点でした:

どのように伝えれば、こちらの意図と考えが相手に伝わるのか?

どのように接すれば良いのか?

二点のポイントをまとめました。


伝えるポイント

1.自分が相手に何を伝えたいのか、まず自分自身が明確に把握する。

2.伝えたいことを整理して簡潔・明確にする。「いつ・どこで・誰が・何を・どうする」を心がけると、内容が簡潔・明確になります。

3.伝え方を工夫する。伝える方法は、言葉に限りません。言葉で伝えたとき、相手が理解されているか、されていないのか、わからないときは、絵・文字で伝えてみます。絵や文字は、受け取った人があとから見返すことができます。

接するポイント

支援者の正直で誠実な態度。支援者(だけでなく関わる人)の言っている内容と態度を一致させる。支援者の、言っている内容と態度が違うと、混乱する人がいます。また、「相手から教えてもらう」姿勢をもつと、関わりで得られるものが格段に豊かになります。

Q&A:支援者からの相談例

Q1.障害者手帳はメリットがあるが、ご本人に手帳のことをどのように切り出したらよいか?

A1.ご本人に会う前に、障害者手帳のメリットを書き出して、メモをつくります。ご本人との面談中に「障害者手帳というものを、ご存知ですか?」と切り出す。知らない場合は、メモの内容を伝えます。ご本人が、手帳に関心が無いようであれば、ご本人が手帳をどのようにとらえているのか、ご本人から教えてもらいます。


Q2.ご本人と周りとの間に、認識のずれがあるとき、そのずれをどのように伝えればよいか?

A2.「認識のずれ」は抽象的で捉えどころがないものです。実際に「認識がずれた」とき、できればその場で、話題にします。周りの意見とご本人の意見の両方を並べて、両者の違いを明らかにします。違いが明らかになったあと、その違いを受け止めるのは、ご本人と周りの両方です。


Q3.ご本人に、課題を指摘して取り組むよう説明しても理解してもらえない。

A3.正直で誠実な態度で指摘する。課題に取り組まない理由をご本人に尋ねてみる。理由は一つではないかもしれません。私が関わった自閉症・発達障がいの人たちは、こちらが指摘するより前に、すでに自分の課題を理解している人は多いです。課題の解決方法が見つからないのか、指摘された課題が自分の中で優先順位が低いのか、以前取り組んでうまくいかなかったことに引っ掛かりがあるのか。取り組まない背景には様々なことが隠れています。


Q4.話し始めると一方的に話し続ける方の接し方。ご本人が話し終わるまで、傾聴した方がよいのでしょうか?  

A4.その日、相手に会うこちらの目的を、会う前に確認します。傾聴するために会うのではないはずです。会う目的は、相手にとってメリットのある情報などをこちらが用意していて、それを提供するためです。それを提供できずに時間切れになっては、相手に大きな損失を与えてしまいます。最初に、時間を宣告して、時間になったら退出します。その日、自分が伝えたいことは、はじめと最後にくり返して伝えます。ご本人の話にまとまりがないように感じたら、話の途中で「お話を伺って、私は~と理解したけれど、間違ってないですか?」と内容の確認と整理を一緒にします。


Q5.ご本人に発達障がいの特徴があるようにみえる。ご本人に受診・検査を受けてほしいが、どのように伝えればよいか?

A5.医療機関の受診・検査はだれでもハードルが高いです。まず、「発達障がいの診断」がご本人にとってどれだけメリットがあるか、をこちらが明確に把握する必要があります。メリットがはっきりしていて、それを相手に簡潔に伝えられるなら、伝えてみるのもよいかと思います。受診・検査の目的が、診断をつけることではなく、ご本人の健康状態から必要な場合は、必要だとこちらが判断した内容を整理したうえで、相手に簡潔に伝えて、身近な健康相談室などを紹介するのもよいと思います。どちらにしても、医師でない人が、相手やその周りの人に「発達障がいの特徴があるようにみえる」と言った場合、それは大きな過ちを犯しています。自閉症・発達障がいは診断に関わる呼び名です。相手に診断名がつけられるのは医師だけです。例えば、最近、急激に痩せて食欲がない同僚をさして「~さんは、胃がんの特徴があるようにみえる」と言うでしょうか?その同僚には「念のため、一度診てもらったら?」などというのではないでしょうか。その声掛けには、相手への思いやりが含まれていますよね。

Q&A:当事者および友人からの相談例

当事者及び友人の方からの相談では、診断や支援制度の問い合わせが多かったです。


Q1.就職したあと、どんなサポートが受けられるのですか?

A1. 障害のことを就職先に伝えて一般就労した場合は、 就職したあとに「就労定着支援」サポートが受けられます。 「就労定着支援」は、就労移行支援事業所や就労継続事業所など、様々な種類の事業所が行っています。どこに決めるかは、就職のときにサポートを受けていた支援機関と相談して決める場合が多いようです。利用料金は、利用する人の前年度の収入によって変わります。「就労定着支援」サポートの主な内容は、就労した人の相談、就職先の会社との調整です。サポートの期間は、就職直後から最長3年間です。利用料金の確認と利用申し込みは、市区町村の障害福祉課や相談窓口で行います。


Q2.障害福祉サービスについて知りたい。

A2.  障害福祉サービスには、住む場所・働く場所・就職の相談と準備する場所・生活の困りごと相談をする場所、があります。住む場所はグループホーム(共同生活援助)、働く場所は就労継続A型・B型(作業所)、就職の相談と準備する場所は就労移行支援、生活の困りごと相談は相談支援事業所が行います。障害福祉サービスの利用について知りたいときは、市区町村の障害福祉課や相談窓口に相談すると、利用に関することを教えてもらえます


Q3.発達障がいの診断はどのようにされるのですか?

A3. 診断は医師が行います。診断のおおまかな流れ:

1.心療内科、精神科、発達専門外来、のどれかで、医師の診察を受ける。

2.医師が心理師(公認心理師、臨床心理士)に心理検査の指示を出す。

3.指示を受けた心理師は次のことをします:心理検査(知能検査、発達検査など)の実施。過去の生活歴などの聞き取り。心理検査結果と生活歴のレポートを作成。レポートを医師に提出。

4.医師はレポートをみて判断する。心理検査を受けて、発達障がいの診断がつかない場合もあります。

心理検査を受けたあと:心理師が、ご本人やご家族に、心理検査結果をわかりやすく説明して、結果のレポートを渡します。

検査結果とレポートは、誰が読んでも分かりやすいように書かれているはずです。検査を受けて終わり、ではなく、ご自分の障害を周りに説明するとき、検査結果を活用すると、周りの人に理解してもらいやすいです。


Q4.障害者手帳はどのように判断して交付されるのですか?

A4.  障害者手帳には3種類(精神障害・知的障害・身体障害)あります。現在、多くの自治体が「発達障がいを精神障害に含む」扱いをしています。精神障害の障害者手帳を「精神障害者保健福祉手帳」(以下、精神手帳)と言います。精神手帳の申請は、住まいの近くの保健所、または役所の障害福祉課などの窓口で行います。申請がはじめての場合は、窓口に「申請書」と「診断書」の様式があるので、前もってもらっておきます。はじめての申請では、「発達障害」の診断を受けた日から、「6か月たっていること」を条件にしている自治体があります。申請の前に、窓口で確認してみましょう。心療内科、精神科、発達専門外来、のいずれかの医師に、窓口でもらった様式を渡して、「診断書」を書いてもらいます。診断書と申請書を窓口に出すと、精神手帳が交付されます。交付は、診断書によって判断されます。